2020/10/07
【感染対策×社内ルール】社員の安全を守る感染対策ルール設定5つのポイント
新型コロナウイルス感染症の流行・拡大に伴い、通勤の制限やリモートワークが推奨されるなど、私たちの働き方は大きく変わりました。それに伴い、社内で独自に感染対策のルールを設けようと考えている企業も少なくないかと思います。
そこで問題になってくるのが、自社のワークスタイルやオフィスに合わせた感染対策ルールの設定と、その運用方法。
すでに、ある程度は世の中に浸透してきている感染対策やその方法。しかし、それを考慮したうえで「我が社の感染対策ルール」を設けるには、業務内容や働き方、社員それぞれの普段の生活までを考慮した上で、自分たちにフィットする内容を考えなければいけません。
そして一度ルールを設けたあとは、その運用が必要になります。そのため、社員が守りやすいような運用の仕組み作りや、世間の状況を鑑みた内容の調整といった対応も不可欠に。決して「ルールを作ったらOK」ではないのが難しいところです。
アイグッズでも、2020年4月に最初の感染対策ルールを設定。その後、感染傾向や時期などコロナウイルスの状況に合わせて柔軟に変更したり、新たな制度を設けたりすることでルールの運用を行ってきました。
目次
重大な局面だからこそ、対策は皆で考えたい
オフィスでの業務と感染対策を両立させるため、厚生労働省では「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」を作成、企業向けに広く共有されています。そこでは「会話をする際は可能な限り真正面を避ける」「咳エチケットを周知し、徹底している」等の項目が設定されています。
しかし、業務上人との接触が避けられない、オフィスの都合でソーシャルディスタンスを保ちつつ働くのが難しい、など、企業の問題もそれぞれ。チェックリストでまとめられた内容をオフィスで実践するためには、企業の業務やオフィスにあわせた調整が必要になります。
アイグッズでは、コロナウイルスの影響が少しずつ拡大するなかで、アイグッズ代表取締役の三木が先頭に立ち、業務中の具体的な感染対策を社内で周知していきました。
当時行っていた対策とは、「職場への行き来の他にも電車には乗らない」といったもののほか、「会議は原則オンラインで、それが難しい場合はマスクやフェイスシールド、そしてPVC(ポリ塩化ビニル)手袋などを着用して行う」といったもの。「外出先で書類の記入が必要な場合は自分の筆記用具を使う」、「タクシーに乗ったらアルコールスプレーで手に触れる場所を除菌する」など、数々の感染対策を代表の三木自ら実践した方法を社員に発信していました。
一方の社員は、大きなリスクである満員電車の出社を避けるために電車通勤の社員は在宅勤務、その他の社員は徒歩通勤に。しかしアイグッズは企業の方針で全体の約8割の社員がオフィス徒歩圏内に在住ですので、出荷・検品作業などで出社が避けられない場合も、不特定多数との接触を避けつつ、業務を継続して行うことができました。
3月から4月にかけ手探りで行っていた感染対策について、三木はこう話します。
「当時は、コロナの話題で深刻になったり、不安になったりしてしまうことが特に多い時期でした。しかし、重大なことだからこそ皆でやるべきことを考えて、社員全員で対策を進めていきたい。そうすればコロナ対策を自分ごと化し、やっていることをより身近に感じられるのでは、と思ったんです」(三木)
社内ルールは、新制度を一緒に作って社員をバックアップ
手探りの感染対策を進めながら、アイグッズでは、社員が取り組むべき内容をまとめたチェックリストを作成しました。
チェックリストが完成したのは2020年の4月。国内の感染状況が深刻化し、リモートワークやWeb会議といったコロナ禍における新しい働き方が徐々に浸透してきた時期です。
チェックリスト制作を担当したのは、2020年にアイグッズに入社した新卒社員。企業に求められている内容や、世間一般で良いとされている感染対策の方法などをリサーチしたうえで、これまで感染対策を実践するなかで経験したことや社員による学びを盛り込み、「アイグッズに合わせた感染対策」を設定しています。
対策ルール設定は、可能な限り現場に近い社員が担当するのが効果的です。感染対策が「上司が決めたルール」となってしまっては、社員が当事者意識を持ちにくいだけでなく、運用にあたっての細かい調整やルール変更の判断を即座に行うことが難しくなってしまいます。普段の業務内容を理解しており、現場に近い担当者が社員一人ひとりの声を吸い上げ、ルールを設定するのが良いでしょう。
しかしこのときに作成した項目は、十分な対策方法がまとめられている一方で、一部、実践が現実的には難しい内容もありました。「食事は、他者と2メートル以上離れて取っている」や「生活必需品購入のための外出を週1回以内に控えている」等、具体的な感染対策が一般的に浸透していない状況下で制作したこともあって、社員にはとても厳しい対策が求められていたのです。
自社にあわせたルールを設定しても、それが守るのがとても大変だったり、非現実的なルールだったりしては意味がありません。そこでアイグッズでは、自己申告によりチェックリストを埋めることができた社員には奨励金を出す、「コロナ菌・撃退金」制度を定め、社員の感染対策徹底を後押しする仕組みを設けました。
スーパーやコンビニのかわりにデリバリーサービスを注文する必要性も高まり、対策徹底のためにはどうしてもコストがかかってしまうことも新制度を設定した理由の1つです。
厳しいルールを設けるのであれば、会社側でルールを守るために必要なものを準備したり、守りやすい仕組みを作ったりといった「ルール推進をサポートするための工夫」を用意すると、社員もより対策に取り組みやすくなるでしょう。
形骸化しないよう、ときどきの状況にあわせてルールをアップデート
その後、緊急事態宣言は解除されたものの、以降の都内では再び感染者数が増えていく傾向に転じました。しかし、そんな中でも緊急事態宣言発令前の通常運行に近い業務体制に戻る企業も少なくなく、企業活動をしながらも感染予防をどのように行うのか、両者のバランスを見極めなければいけない状況に。
世間が「新しい生活様式」へゆるやかに移行していく6月頃には、社内ルールをその時期や風潮にフィットした内容へ調整する必要があるのではないか、という声が社内でも上がるようになりました。そこで行ったのが、4月に作成したチェック項目の精査です。守るのが厳しいものや時期と合わなくなってしまった項目の内容を再考し、2週間程度で新しいチェック項目を作成しています。
社員や関係者を守るために行う感染対策ですが、「ただ設けただけ」ではルールそのものが形骸化してしまい、その意味が無くなってしまいます。そこで、感染者数の推移や世間の風潮だけでなく、社員にルールがどの程度浸透しているか、といった諸要素から「そのときどきに求められている感染対策」を読んだ、ルールのアップデートが必要になっていくのです。
今回のアイグッズのルール変更は、「緊急性の高い時期は脱したが、引き続き感染対策は必要」「感染対策を行いながら、なるべく通常に近い形で業務を行いたい」「4月以降のルール運用の結果、社員には十分に感染対策が浸透しているので、厳しすぎるルールは緩和してもいいだろう」といった判断によるものです。
たとえば、変更前のチェックリストにあった「スーパーやコンビニは自分以外のお客さんがいないときしか入らない」というものも、項目のリニューアル以降は「スーパーやコンビニは混む時間帯を避けて利用する」というように調整。新しく設定されたチェック項目は、2020年8月よりすでに運用がスタートしています。
ルール運用を通して、社員の意識付けを行う
社内では、社員それぞれがチェックリストを意識し、実行していくことが対策の基本ルールとなっています。しかし、ルールが身につくにつれて、自然と一人ひとりが自分の頭で考え、自分なりのルールを設定するようにまでなりました。ルールが可視化されて今まで意識していなかった対策方法を自ら考えたり、それぞれが普段とっている対策を社内で情報交換したりすることで、一人ひとりの意識が高まっていったことが理由だったのかもしれません。
「個人レベルでどのようなことに気をつけるようになったか」というアンケートをとったところ、以下のような回答が集まりました。
出社、通勤時の工夫
・エレベーターは使用しない
・信号待ちでは人との距離を保つ
・やむを得ず電車に乗る場合は、自分から人混みに近づかない
・電車の乗降時はすぐにアルコール消毒。手すりはつかまない
・出社前と出社後には、検温とアルコール消毒を徹底
・出社前、マスクは除菌スプレーをしてから装着する
商談を行う際の工夫
・近隣でもタクシーを使う。電車はできるだけ使用しない
・打ち合わせはできるだけZoomを使用、オンラインで行う
社内滞在時の工夫
・マスクは屋内用と外出時用にわけ、その時々で付け替える
・2〜3時間おきに身の回りの消毒を行う
業務時間以外、プライベートでの工夫
・ATMのタッチパネルやお店のドアノブ、机などを触った時はすぐにアルコール消毒
・喫茶店に入ったときは、机にまずアルコール消毒
・玄関にアルコールのボトルを置き、帰宅後は部屋に入る前に消毒
・可能な限り、セルフレジを使用する
・免疫力アップのため健康的な食事と運動を心掛ける
家族や友人との関わりでの工夫
・感染させてしまうことを考慮し、高齢者にはなるべく会わない
・やむを得ず帰省をする場合も、電車を使わず車で
厚生労働省のガイドラインは、どのような立場においても有効ですが、その立場や業種によってアレンジしなければ対応できないことも多くあります。アイグッズが策定したオリジナルのガイドラインが、企業の担当者様に届き、社内の制度づくりの一助になれば幸いです。
アイグッズが考えた、「社内の感染対策ルール設定」の5つのポイント
- 厚生労働省ガイドラインを参考にしつつも、自社にあわせてルールを調整する
- 自社にあわせるため、感染対策の実践で得た経験をルールに反映する
- ルールは一度設けてからも、社員の状況をもとに細かい調整を行っていく
- 社内だけでなく世間の状況にも合わせる。時にはルールを緩和する必要も
- あくまでも、ルールは社員の意識付けを行うための方法であることを心に留めておく
(文=赤坂 太一/編集=ノオト)
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