2020/11/16
【医師監修】不織布マスクの選び方|BFE・PFE・VFEの違いとは
新型コロナウイルスの影響で品薄状態が続いていた不織布マスクですが、最近ではさまざまな種類のものが店頭に並ぶようになっています。そこで気になってくるのが、購入するマスクの機能や効果。ろ過率や品質表記など、それぞれの情報についてよくわからないまま選んでしまうことも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、不織布マスクを選ぶときのポイントをまとめました。購入の際にぜひ役立ててください。
目次
不織布マスクってどんなマスク?
不織布とは、繊維同士を織り込まずに絡み合わせたシート上の布のことです。
不織布が一般的な家庭用マスクにも使用されるようになったのは2003年頃のこと。それまでマスクに広く利用されていたガーゼと比べると、繊維同士の隙間が少ないのに通気性は良いのが特徴で、不織布の登場によってマスクの性能は格段にアップしました。使い捨てできるため、衛生的なのも嬉しいところですね。
不織布マスクは一枚の布でできているように見えますが、実は3~4枚の不織布が重なってできており、内部にはウイルスや花粉などの粒子を捕集するフィルターが入っています。このフィルターも不織布でできていますが、粒子の捕集率をアップさせるような加工が施されています。 ガーゼ、布、ウレタンなど、マスクの素材にはさまざまなものがありますが、感染対策効果が高いのは不織布マスクと言ってよいでしょう。
不織布マスクの「ろ過率(遮断率)」とは? その確認方法
不織布マスクはどれも同じに見えるかもしれませんが実は多くのタイプがあり、性能もタイプによって異なります。
まず、マスクの性能を左右する指標となるのは「ろ過率」です。ろ過率とは、マスクのフィルター部分でどれだけの大きさの粒子をどの程度カットできるかの示す指標のこと。一般的には「遮断率」とも言います。
細菌、ウイルス、花粉、PM2.5、唾液の飛沫などマスクでシャットアウトしたい粒子は多々ありますが、それぞれ粒の大きさは異なります。最も小さいのはウイルスで大きさは0.1~0.5㎛(マイクロメートル)ほど。細菌は1.0㎛、飛沫は3.0~5.0㎛、花粉は30.0㎛が平均的な大きさ。大気汚染で問題となるPM2.5の大きさは2.5㎛以下の粒子と定義されています。
マスクの性能は、より小さな粒子を高率で捕集できるほど高いとされています。このようなマスクのフィルター性能を評価するため、一般的な製品は次のような検査が行われています。
■ BFE:バクテリア(細菌)ろ過効率
約3.0㎛の大きさの細菌を含む粒子をどれだけカットできるか示したものです。つまり、「BFE99%」との表記があれば、3.0㎛の大きさの粒子を99%の確率でカットすることができるということ。細菌による感染症や花粉症を予防する効果は高いと考えられます。
■ PFE:微粒子ろ過効率
約0.1㎛の大きさの粒子をどれだけカットできるか示したもの。PFEが高値であればあるほどインフルエンザウイルスなど粒子が非常に小さな病原体もしっかりカットすることができるということです。
■ VFE:ウイルスろ過効率
約1.7㎛の大きさの粒子をどれだけカットできるか示したもの。一般的なウイルスやウイルスを含んだ飛沫などの遮断効果を示しています。
ろ過できる粒子が小さく、ろ過率が高いほど性能がよいマスクと考えられます。
しかし、性能のよさとマスクの価格は必ずしも比例しません。マスクの価格は、産地やブランドなどの影響を受けやすく、流通コストなども上乗せされた価格になるため、PFEが低くても高額なケースもあれば、PFEが高くても安価なケースもあるのです。マスクの価格だけで判断するのはNG。しっかり表示を確認することが大切です。
また、マスクにはさまざまな用途がありますので、カットしたい粒子に合わせて選ぶとよいでしょう。気になる新型コロナウイルスの大きさは0.1㎛ほど。しかし、現在のところ新型コロナウイルスは「飛沫感染」によって拡がっていると考えられていますので、飛沫をカットすることができる「VFE」が高いものを選ぶのがポイントです。
一方で、新型コロナウイルスはエアロゾル(空気中に漂う粒子のこと)による感染が起こるケースもあることが指摘されています。エアロゾルの大きさは飛沫より小さい場合もありますので、可能であれば「PFE」が高率なマスクを選ぶとよいでしょう。
なお、一般的な家庭用マスクは「花粉対策用」・「風邪、ウイルス対策用」・「PM2.5対策用」と用途によって3つのタイプに分類されます。中でも「PM2.5対策用」と表記されている製品はPFEの試験を行って一定以上の数値が確認されたものです。検査結果の表記がよく分からないという方は、「PM2.5対策用」とされているものを選びましょう。
「風邪・ウイルス対策用」マスクはBFEとVFE試験のみが課されたマスクですので、エアロゾルが発生している場合は十分な予防効果が得られないか場合があります。もちろん、「風邪・ウイルス対策用」のマスクであっても着用する方が感染を防ぐことができる可能性ははるかに高くなりますが、「PM2.5対策用」があればそちらを選ぶのがおすすめです。
検査結果が表記されていれば、マスク産地は問題ない?
マスクを選ぶときに性能だけではなく産地を気にする人も多いのではないでしょうか?
何となく国産だと安心、海外製品だと不安……と思う方も多いでしょう。しかし、基本的には産地がどこであれPFEやVFEなどの検査結果が表記されていれば品質に問題はないことがほとんど。現在日本に出回っている不織布マスクの大半は中国製ですから、必要以上に産地を気にする必要はないのです。
一方で、世界的にマスクの価格が高騰したことに伴い、海外では不正な表記や取扱いをしている「偽物マスク」が出回っているのも事実です。品質表記が怪しいもの、紙箱にそのままマスクが入れてあるなど衛生管理がずさんなものは「偽物マスク」の可能性がありますので注意しましょう。
価格以上に「フィット感」「品質表記」が重要
一時期に比べれば不織布マスクの価格は落ち着いているとはいえ、新型コロナウイルスの流行が始まる前に比べれば価格の高騰は続いています。価格帯もバラバラ。1箱1,000円以下の製品もあれば、未だに3,000円以上する製品も少なくありません。
不織布マスクを選ぶ際にこのような価格帯の違いを参考にする方も多いでしょう。もちろん、「国内工場で生産されている」・「材質にこだわっている」と謳われたマスクが高値なのは当然のことです。
しかし、一般的に広く販売されているマスクの価格差は、流通方法や売り手の利益率などの違いによるもの。品質に大きな差があるわけではありません。むしろ、産地や品質の表記が不明瞭であるにも関わらず高値で販売されている不織布マスクは、「偽物マスク」の可能性もあります。
不織布マスクを選ぶときは、価格に注目せず、性能と顔へのフィット感や付け心地などを重視するようにしましょう。
プリーツタイプと立体タイプ、どちらがいいの?
不織布マスクには、プリーツを広げて顔にフィットさせるタイプのものと立体型のものがあります。どちらも内部にフィルターが入っていますので、同じ素材であれば性能に差はありません。
しかし、単にろ過率が高いマスクを付けているだけでは十分な感染予防効果を得られないことも……。大切なのは、隙間なく顔にしっかりフィットするサイズを選ぶことです。鼻や頬に隙間ができてしまったり、鼻から顎までしっかり覆えなかったりする場合は、せっかくフィルターの性能が良くても無意味になってしまいます。
一般的にはプリーツタイプの方が顔のラインに合わせて形を変えることができますので、フィット感はよいことがほとんど。しかし、プリーツタイプの不織布マスクは顔に密着する部分も多いため息苦しさがある、化粧が落ちる、といった難点もあります。
一方、立体タイプのマスクはカップのように立体的に裁断・縫製された不織布を顔に「乗せる」ようにして使用します。サイズが合ったものを使用すれば、プリーツタイプの不織布マスクの難点を解決してくれますので、化粧をする方には立体タイプがおすすめです。しかし、プリーツタイプよりも伸縮性が乏しいため、サイズが合わない場合は隙間ができやすくなりますので、注意が必要です。
不織布マスクが手に入らないときは、布マスクでも代用可
日本国内で新型コロナウイルスの流行が始まった頃と比較すれば、今はどこでも不織布マスクが手に入るようになっています。しかし、今後もマスク不足に陥る可能性は十分にあります。
ろ過率が高く使い捨て出来る不織布マスクは新型コロナウイルス対策に有用ですが、どうしても手に入らなくなってしまうこともあるでしょう。また、使い捨ての不織布マスクは経済的に負担になるという方もいると思います。
そのような場合には、ガーゼや布で作られた洗えるマスクがおすすめ。確かにろ過率は不織布マスクよりも低下しますが、スーパーコンピュータ「富岳」の分析によれば、手作りの布製マスクでもウイルスを含む飛沫の7~8割をカットすることができるとのことです。
不織布マスクでなくても感染予防効果はありますので、不織布マスクが使用できないときは布製マスクを活用するようにしましょう。
不織布マスクは性能とフィット感で選ぼう!
不織布マスクには多くの種類があります。感染対策のためにはどのようなマスクを選べばよいか迷うこともあるでしょう。
マスクを選ぶ際に大切なのは、フィルターの性能と顔のフィット感です。フィルターの性能はPFEやVFEの試験結果がしっかりと表記されていることでチェック。顔へのフィット感はマスクを着用したときに隙間がないか、鼻や口がはみ出ていないかを確認するのがポイントです。
最近ではいろいろなマスクが流通していますが、今回ご紹介したポイントを意識してよりよいマスク選びができるようにしましょう。
文・監修:成田亜希子(医師)
2011年医師免許取得。地方都市で一般内科医として幅広い疾患患者の診療を行っている。
行政機関での勤務経験もあり、感染症対策行政に携わってきた。地域住民や医療機関に感染症対策指導を数多く行ってきた。国立医療科学院・結核研究所での研鑽も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会、日本健康教育学会所属。プライベートでは2児の母。趣味は家族の健康を考えた料理作り。
(編集=ノオト)
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