2020/09/08
【医師監修】マスクの着脱|選び方・付け方・外し方・捨て方までの流れを解説
世界を震撼させている新型コロナウイルスが日本でも拡がり始めてから、半年ほどが経ちます。全都道府県に対して緊急事態宣言が発出されるなど、国を挙げての感染拡大防止対策が行われました。感染対策が必要な生活はまだまだ続きそうですが、やはり大切なのは一人ひとりが基本的な感染対策を徹底すること。そして企業には、社員全員をリスクから守るため、正しい感染対策の周知が求められています。
マスクは、誰もが使っている身近な感染対策グッズの一つ。しかしながら、その機能や着用の仕方など、思いの外きちんと知らないことは多いのではないでしょうか? 適切なつけ方や外しても良いタイミング、その捨て方まで、正しいマスクの扱い方をご紹介します。以下のようなやり方を意識して、改めて社内の感染対策周知に役立ててくださいね。
目次
マスクの着用の仕方と選び方は?
普段から使用しているとはいえ、マスクの付け方や選び方にも注意が必要です。以下のことを意識して、行うのがベターです。
マスクの正しい着用方法
マスクは、内側の鼻や口に当たる部分にできるだけ手を触れずに、ゴムを持ったまま耳にかけて着用します。そして、鼻や顎をしっかり覆うように形を整えるのですが、この際大切なのはマスクの上下や裏表です。
一般的な使い捨ての不織布マスクは、生地の中に鼻筋や頬のラインにフィットするようなワイヤーが埋め込まれた「ノーズピース」があるため、上下を間違えることはまずありません。
一方、はっきりしない表裏は、顔へのフィット感をアップさせるためについている「プリーツ」の向きで判断しましょう。プリーツのひだが、下方に伸びるのが表(着用したときの外側)です。裏表を逆に着用してしまうと、上に向いたプリーツにホコリなどの汚れが溜まりやすくなってしまうので注意しましょう。
マスクサイズの選び方
不織布マスクにも、色や柄がおしゃれなもの、フレグランスがついているものなどさまざまな種類が販売されていますが、重視すべきなのはサイズです。「子ども用」・「女性用」・「小さめ」などのサイズもありますので、鼻から顎の下までをしっかりと覆うことができるサイズのものを選ぶようにしましょう。
しかし、マスクはサイズが大きければ大きいほど予防効果が高くなるというわけではない、というのが難しいところ。顔のサイズに合わない大きさのマスクは隙間ができてしまうため、十分な予防効果を得られません。頬の周りに隙間が空かない、フィット感のあるサイズを選ぶのがポイントです。
とはいえ、不織布マスクはノーズピースやプリーツがあるため、顔を覆う範囲の調節もできます。小柄な方でなければ、まずはノーマルなサイズのマスクを試してみるのがよいでしょう。
マスクを外してOKなタイミングは?外したときはどう扱えばよい?
自宅以外ではマスクを着用するのが一種のマナーとも見なされる今、暑くてもマスクを外すのをためらってしまう方も多いでしょう。また、外食時にはどんなタイミングでマスクを外し、使用中のマスクはどこに置けばよいのかも悩みどころの一つですね。
では、マスクを外してもよいタイミングや外したマスクの扱い方について詳しく見てみましょう。
「密」でない場所では外してもよい
そもそも、マスクによって得られる予防効果とは以下のようなもの。
新型コロナウイルスをはじめとする多くの病原体は「飛沫感染」や「接触感染」と呼ばれる感染経路を持ちます。飛沫感染とは、感染者の咳やくしゃみ、会話などによって周囲に飛散する唾液などのしぶきに含まれる病原体が鼻や口から近くにいる人の体内に入り込んでしまうこと。
一方、接触感染とは、病原体が付着した手で口や鼻などを触れることで体内に取り入れてしまう感染経路のこと。マスクは、この2つの感染経路における病原体の侵入口である鼻や口をガードすることで感染症を予防する効果が期待できます。
また、自分自身が感染者である場合も、周囲に病原体が含まれた唾液のしぶきなどが飛散するのを防ぐことができるため、感染を拡げないという効果もあります。
つまり、「密閉」・「密集」・「密接」の、いわゆる「3つの密」が避けられている状況であれば、近くの人から病原体をもらってしまう可能性や近くの人に病原体をうつしてしまう可能性は少ないため、マスクを外してもよいと考えられます。
実際に、熱中症を予防するためにも、人との距離が2m以上確保できる屋外ではマスクを外すよう、厚生労働省も注意喚起を行っています。
職場や学校でマスクを外してもよい?
職場や学校でもマスクを必須とされるケースが多くなっていますが、一日中マスクをつけているのは息苦しく、中には体調を崩してしまう方もいます。
職場や学校は密になりやすい環境であるため、できればマスクを常に着用することが望ましいのは事実です。特に、対面で会話する機会の多い職種の方は飛沫感染を起こすリスクが高くなりますので、会話をするときのマスクは必須となります。
一方、室内であっても隣や前後の人との距離が十分にあり、黙って作業を行うデスクワークなどの場合は短時間マスクを外しても問題ありません。
とはいえ、マスク着用の決まりは職場や学校などによって異なりますので、それぞれに従った着用をすることも大切です。マスクが外せない状況にある場合は、顔の蒸れや息苦しさを感じたら廊下やトイレなど、人の少ない場所でマスクを外して「換気」をするとよいでしょう。
飲食時にはどんなタイミングで外せばよい?外したマスクの扱いは?
外食したときなどは、密な状況であってもマスクを外さざるを得なくなりますが、飲み物や食べ物が出てきてから外すのがベター。注文を終えてすぐにマスクを外してしまい、狭い空間で会話をすると感染リスクは高くなりますので要注意です。
また、使用中のマスクを机や椅子の上に置いたり、カバンの中にそのまま入れたりするのは避けましょう。マスクの表面には様々な飛散物が付着しています。新型コロナウイルスなどの病原体が潜んでいる可能性もありますので、扱いには慎重にならなければなりません。
一時的に使用中のマスクを保管できるマスクケースを用意しておくのが理想的ですが、持ち歩いていない方はハンカチやティッシュなどで裏表を挟むように包み、カバンの中などにしまいましょう。
もちろん、マスクを包んだハンカチやティッシュにも病原体が付着してしまう可能性がありますので、マスクが触れた面は触らないようにして洗濯したり、そのままゴミ箱に入れて捨てたりするのも忘れずに。包んだものの処理にも気を遣うことになりますので、外食する機会の多い方は専用のマスクケースを用意しておくとスマートですね。
やってしまいがちな「顎マスク」はNG!
短時間の飲食中や息苦しさを感じたときなど、無意識にマスクを顎の下まで下げて鼻や口を出している方はいませんか? いわゆる「顎マスク」と呼ばれるこの動作、気温が高い時期や飲食店などではよく見かけますが、実は感染リスクが高まるNG行為でもあります。
というのも、上述したようにマスクの表面には病原体を含む飛散物が付着している可能性があります。顎まで下げて再び鼻まで引き上げる際、汚染されたマスクの表面が口などに触れてしまう可能性も……。また、マスクの表面に手で触れることにもなるため、マスクを外す必要があるときは顎マスクではなく、顔からしっかり外すようにしましょう。
マスクを捨てる時はどんなことに注意すべき?
最後に帰宅後などにマスクを処分するときの注意点について見てみましょう。
実はマスクの扱い方で最も注意したいのはマスクの外し方と処分方法です。せっかくマスクで感染予防を講じていたのですから、正しい外し方と処分方法を覚えて、最後まで感染リスクを低下させるようにしましょう。
マスクの正しい外し方とは?
一日着用したマスクの表面にはさまざまな汚れがいっぱい。病原体が付着している可能性も低くありません。布部分を引っ張ってマスクを外す方もいますが、手に病原体がついてしまうこともあります。
感染リスクを最大限に低くするには、布部分に触れないよう注意し、耳の後ろのゴムの部分を取って外すようにしましょう。
マスクはどうやって捨てればいいの?
ゴムの部分を取って外したマスクはそのまま布部分に触れることなく、表を下側にしてそのままゴミ箱に入れるようにしましょう。マスクに付着した病原体がゴミ箱を飛び出して空気の中を舞う……というリスクは低いと考えられますので、その後はゴミ箱に入れたままで構いません。
しかし、感染症が流行している地域の方、家族など身近な方が感染症にかかっている方などはマスクにも病原体が多く付着している可能性がありますので、できるだけ早く処分するのがよいでしょう。その際にはマスクに触れずに、ゴミ袋の口をしっかり縛って密閉するのがポイントです。
マスクと毎日のケアで、十分な感染対策を
現在のところ、新型コロナウイルスの完全な終息の目途は立っていません。そのため、私たちの生活は「ウィズコロナ」にシフトしつつあります。新型コロナウイルスと共存していくためには、一人ひとりが緊張感をもって感染対策を講じていくことが大切です。
マスクの着用は飛沫感染や接触感染を防ぐ効果があるため、自宅以外の場ではマスクがほぼ必須となっています。しかしながら、マスクの正しい使い方を知らない人も多いかもしれません。間違った使い方ではかえって感染リスクが高くなるケースもありますので、今回ご紹介したことを参考に、正しいマスク生活を送るようにしましょう。
ただし、マスクの着用は感染症を完全に防ぐものではなく、十分な感染対策効果はないとの意見もあります。感染症を予防するには、マスクの着用以外にも手洗いや消毒などの対策も行い、大勢での会話を避ける・流行地では不要不急の外出を避けるなど日常生活上の行動にも注意することが大切です。
文・監修:成田亜希子(医師)
2011年医師免許取得。地方都市で一般内科医として幅広い疾患患者の診療を行っている。
行政機関での勤務経験もあり、感染症対策行政に携わってきた。地域住民や医療機関に感染症対策指導を数多く行ってきた。国立医療科学院・結核研究所での研鑽も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会、日本健康教育学会所属。プライベートでは2児の母。趣味は家族の健康を考えた料理作り。
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