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「もしかして感染?」に備えて知っておこう PCR検査・抗原検査・抗体検査、3つの違いと特徴

「もしかして感染?」に備えて知っておこう PCR検査・抗原検査・抗体検査、3つの違いと特徴

2019年末から世界を震撼させている新型コロナウイルス。いまだ終息の目途は立っていないものの、新型コロナウイルス全貌解明に向けた研究のなかでより正確に、迅速に、簡便に行うことができる検査方法が確立されてきています。

2020年9月時点において、新型コロナウイルスに感染しているか否かを調べるには「PCR検査」・「抗原検査」・「抗体検査」という3種類の検査が行われています。しかし、耳にすることはあっても、それぞれどのような検査なのか正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。

社員の感染検査が必要になった場合に備えて、それぞれのメリットとデメリットや、具体的にどのような特徴があるのかを詳しく見てみましょう。

比較的精度は高いが、診断に時間がかかる「PCR検査」

PCR検査とは、咽頭拭い液(※)・唾液・血液などに、感染症の原因となるウイルス・細菌の遺伝子情報「DNA」や「RNA」が含まれているかどうかを確認する検査です。

※ 口粘膜を綿棒などで強くこすって採取する、検査材料のこと

世界的に、新型コロナウイルス感染を調べるための検査として最初に導入されたのがこのPCR検査。3種類の検査の中で最も精度が高い検査とされており、他には以下のような特徴があります。

PCR検査は「道具」と「技術」が必要!

咽頭拭い液などに含まれるDNAやRNAは微量なため、検査では特殊な薬液を混ぜわせたうえで温度を変化させ、DNAやRNAの増幅を行います。

薬液を混ぜたり温度を変化させたりする過程は非常に複雑であるため、結果が出るまで数時間~1日ほどの時間がかかります。また、検査を行う技師などにも高いスキルが求められるため、実施できる施設は限られているのが現状です。

なお、当初は確定診断のためのPCR検査は咽頭拭い液を使用して行われていました。しかし、咽頭拭い液を採取する際、鼻水やのどの粘液などがエアロゾル(空気中を漂う小さな粒子)化します。新型コロナウイルスが含まれるエアロゾルは数時間空気中を漂い、それを吸い込んだ人に感染させるリスクも……。そのため、医療従事者などへの感染を防ぐため、現時点ではエアロゾル化のリスクが低い唾液を用いたPCR検査も保険適応で行うことができます。

PCR検査に用いる検体の種類は検査機関によって異なりますが、より精度が高いのは咽頭拭い液を用いた検査です。いわゆる「陰性証明」をするために無症状の方が検査を受ける場合は唾液検査で行う機関が多いですが、症状があって新型コロナウイルス感染が強く疑われる場合は咽頭拭い液を用いた検査を行うケースが多いようです。

PCR検査は「道具」と「技術」が必要!

PCR検査で「陰性」でも、感染している可能性はゼロではない?

PCR検査は、現在導入されている3種類の検査の中では最も精度が高いとされています。しかし、100%の確率で新型コロナウイルスに感染しているか否か判定できる検査ではありません。

現時点では、実際に感染していても、そのうちPCR検査で陽性(感染している)と判定されるのは7割ほど、とされています。逆にいえば、感染していても3割の確立で陰性(感染していない)の判定が出る場合がある、ということ。

PCR検査は新型コロナウイルス感染症の確定診断に用いられていますが、検査で陰性と判定されたとしても、新型コロナウイルスに感染していることを完全に否定することはできませんので注意が必要です。

結果は早いが、偽陰性が出がちな「抗原検査」

抗原検査とは、咽頭拭い液などにウイルスや細菌の抗原(各病原体特有の形のたんぱく質など)が含まれているか調べる検査です。

短時間で結果が分かり、簡便に検査を行うことができるためアメリカで導入されたのを皮切りに、日本でも2020年5月に保険適応が可能な検査として認可されています。

「簡易キット」を使い30分ほどで検査が可能

抗原検査のメリットは、非常に簡単に検査ができることです。咽頭拭い液に病原体の抗原にくっつく性質を持つ「抗体」が含まれた薬を混ぜ、抗原と抗体の反応があるか否かを調べる、というのが抗原検査の原理。インフルエンザ、溶連菌、RSウイルスなどの診断にも簡易キットを用いた抗原検査が広く行われています。

抗原検査は特別な検査機器や技術は不要。簡易キットで調べることができるため、大がかりな検査室のないクリニックなどでも実施できます。また、30分ほどで結果がわかるのもメリットの一つです。PCR検査よりも結果が出るまでに「待つ」時間が少ないため、その間に感染を拡大させないことにもつながります。

新型コロナウイルスの抗原検査を可能にするには、新型コロナウイルスに対する抗体を作成しなければならず、世界中で研究が進められていました。そして、2020年3月に台湾が抗体の作成に成功。5月には世界中で抗原検査が正式に行われるようになりました。

「簡易キット」を使い30分ほどで検査が可能

確定診断のため、追加でPCR検査が必要な場合も

抗原検査はPCR検査よりも必要なコストや時間を考えれば、メリットが大きな検査方法に思えるかもしれません。しかし、抗原検査は「偽陰性」が出やすいというデメリットもあります。

偽陰性とは、新型コロナウイルスに感染しているにも関わらず、検査の結果、陰性、つまり「感染していない」と判定されてしまうこと。抗原検査は遺伝子を増幅させて判定を行うPCR検査よりも多くのウイルス量が必要であるため、発症してから経っている時間や咽頭拭い液の採取方法などによっては正確な判定が行えない可能性があります。

厚生労働省が示す現時点での方針は、ウイルス量が多くなる発症後2〜9日以内に抗原検査を実施して、陰性と判定されれば追加検査は不要。しかし、発症当日や発症して10日以上経過している場合は、たとえ抗原検査で陰性と判定されたとしても感染を否定することはできないため、追加のPCR検査が義務付けられています。

一方、抗原検査で陽性と判定された場合は、追加検査の必要なく新型コロナウイルス感染症と確定診断することが可能です。

簡易キットで行えるが、精度が不安な「抗体検査」

抗体検査とは、血液中に特定のウイルス・細菌を攻撃する「抗体」が含まれているか否かを調べる検査のことです。

私たちの身体には、ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入すると、その病原体を攻撃する物質が作られるようになる仕組みが備わっています。これが「抗体」です。

抗体は各病原体にくっつきやすい形となっているため、その形は対応する病原体によって異なります。抗体検査は特定の病原体に対する抗体があるか否かを調べることで、体内にその病原体が入り込んだことがあるか判断する、という仕組みです。HIVやC型肝炎ウイルス感染を調べる際にも抗体検査が行われます。

簡易キットで、体内の抗体の有無を検査する

現在、新型コロナウイルス感染を調べるための抗体検査は抗原検査と同じく「簡易キット」を用いて行います。血液を採取し、簡易キットの試薬に垂らすと数分で抗体の有無を調べることができます。

抗体検査は、簡易キットさえあればどこでも検査できるため、小規模なクリニックなどでも実施可能です。また、血液を用いて行う検査であるため、咽頭拭い液を採取するときのような感染リスクもなく、非常に安全に検査を行うことができるのも大きなメリットと言えるでしょう。

簡易キットで、体内の抗体の有無を検査する

なお、現在日本でも広く使用されている新型コロナウイルスの抗体検査キットは2種類の抗体の有無を調べることが可能です。同じ病原体に対するものでも、抗体にはいくつかの種類があります。抗体検査キットでは、感染して間もない時期に多く産生される「IgM」、感染して10~14日経過してから産生される「IgG」の有無を調べることができます。

つまり、IgMが陽性の場合は「新型コロナウイルスに感染して間もない」こと、IgGが陽性の場合は「過去に新型コロナウイルスに感染したことがある」ことが分かるのです。

簡易的に行えるが、精度には不安の声も

抗体検査のデメリットはPCR検査や抗原検査に比べると精度が低いことです。

感染すると早い段階で産生が開始されるIgMであっても、検査で検出できる量が産生されるには数日かかります。症状が現れてすぐに医療機関を受診して検査を行っても、陰性と判定される可能性が高いのです。

また、新型コロナウイルスの世界的な流行が生じてから約9カ月。現在では世界の様々なメーカーから抗体検査キットが販売されていますが、精度がはっきりわからないものも多く、安易な利用に懸念の声も多く上がっているのが現状です。日本感染症学会なども抗体検査は性能がキットによって大きく異なる可能性を指摘しています。

そのため、日本では正式に厚生労働省から認可された抗体検査キットは今のところありません。独自にキットを導入している医療機関も多いですが、抗体検査で陽性と判定された場合であっても、PCR検査や抗原検査による追加検査が必須となります。

必要な検査内容は、医師の指示に従って決める

新型コロナウイルス感染症患者が日本でも増え始めた当初、検査は保健所などの行政機関が必要の可否を判断する「行政検査」のみが行われていました。しかし、各都道府県で検査体制が整ったこと、行政機関の判断と実際に患者を診察した医師の判断に乖離があったことから、2020年3月には行政機関を通さずに、医師が必要であると判断すれば検査が保険適応で行えるようになりました。

現在では、各地域の帰国者・接触者相談センター、医師会などの検査センターだけでなく各医療機関で検査を受けることができます。また、海外出張などで「陰性証明」が必要な場合は、自費にはなりますが、無症状であっても医療機関で検査を受けることが可能です。

検査の種類は検査センターや医療機関によって異なりますが、上述したように抗原検査や抗体検査は追加でのPCR検査が必要になるケースも少なくありません。医師の指示に従って検査を進めるようにしましょう。

医療機関ごとの検査内容は事前にチェックする

新型コロナウイルスに対する「PCR検査」・「抗原検査」・「抗体検査」はいずれもメリット・デメリットがあります。

医療機関ごとの検査内容は事前にチェックする

精度は高いけれどコストや時間がかかるPCR検査。簡便に短時間で検査できるものの偽陰性の可能性もある抗原検査。最も簡単に検査できる一方で見逃しが多く、精度がバラバラな抗原検査。

検査数が限られていた時期もありましたが、今では行政の検査センターだけでなく一般的な医療機関でも新型コロナウイルスの検査ができるようになっています。検査を受けることになったら、まずはどのタイプの検査を行っているのか確認し、必要に応じて追加検査も受けるようにしましょう。

文・監修:成田亜希子(医師)
2011年医師免許取得。地方都市で一般内科医として幅広い疾患患者の診療を行っている。
行政機関での勤務経験もあり、感染症対策行政に携わってきた。地域住民や医療機関に感染症対策指導を数多く行ってきた。国立医療科学院・結核研究所での研鑽も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会、日本健康教育学会所属。プライベートでは2児の母。趣味は家族の健康を考えた料理作り。

(編集=ノオト)

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