2021/03/19
今、観光業ができることとは?工夫を凝らし続けるヒルトン東京お台場、そのアイディアの原点と驚きのコロナ徹底対策を取材
コロナウイルスの感染が拡大しはじめ、早1年。2回目の緊急事態宣言は延長を余儀なくされるなど、その猛威はまだ衰えることを知りません。新しい生活様式が広がる中、苦境に立たされている業界の1つに、観光業があります。
今回「このような状況下だからこそ諦めずに工夫をし続けることが必要」と語るヒルトン東京お台場を取材。そこにはグローバルに事業を展開している同社なりの苦悩、そしてお客様にひとつでも多くの笑顔を届けたいという熱い想いがありました。
目次
2020年に向けて体制を整えていたところで、ウイルスが蔓延。一気に観光業は「異常」状態に。
コロナ感染拡大が観光業界に与えた影響をまずお伺いできますでしょうか。
藤本様
コロナ禍においては非常に厳しい局面が続いております。何が一番大きく影響しているかというと、インバウンドの有無ですね。
日本における外国人観光客は2012年からずっと右肩上がりで、最高は2019年の3200万人。その勢いで、2020年にはいよいよ4000万人に到達すると言われていました。
しかし、現状は対前年の5%以下。約50万人しかいない状態です。
日本の観光業において、飛行機での行き来が難しくなったのは、大きな痛手だったのですね。ヒルトン東京お台場のお客様数の変化はどうですか?
藤本様
この1年の間で大きな変化がありました。第1波がきた3〜5月では宿泊部屋の稼働が10%も満たない日があったのです。
感染者数が減っていくと同時に徐々に回復し、7月には最大60%まで稼働が上がった日もありました。そして9月のシルバーウィーク付近で80%近くまで来ていたんです。
対前年の数字まで戻るのではないかと期待していたところもつかの間。東京がGoToトラベルの対象地域から除外されてしまいました。それに加え、第2波・第3波の影響から、現在は全体を通して20%のホテル稼働率となっています。
厳しい状況が続いているのですね。
藤本様
はい。弊社は東京の中でもお台場というリゾート地に位置しているので、23区内のホテルと比べるとまだ稼働率はよい方ですが…正直、業界としては異常状態だと思います。
一般的にホテルは70%の稼働率は維持するべきだといわれている中、20%という数字は少なすぎますね。
海外本部の指示を伺うと同時、総支配人がリーダーシップを発揮して現場に当事者意識を持もたせ、日本に合った独自の対策に取り組んだ
観光業とヒルトン様の現状がわかりました。感染が蔓延し始めた当初、ホテルの現場ではどんな困難があったのでしょうか?
藤本様
春に1回目の緊急事態宣言が出た時には、はじめての経験だったこともあり様々なお問い合わせをお客様からいただきました。
『予約をしているが、この現状の中東京に行っていいのか』『ホテルの感染対策は徹底されているのか』という心配の声が多かったです。
弊社は宿泊以外にもビュッフェや披露宴など、さまざまな用途でホテルをご利用いただいています。すべての場所・状況に応じた感染対策が早急に求められました。
お問い合わせを受け、素早い対応が求められたと思います。対策を進めていく中で、一番苦労されたことは何だったのでしょうか。
藤本様
ホテルとしての体制構築ですね。当初コロナウイルスに関して専門知識を持っている人が少なかったので、正しい情報が得られませんでした。
とくに弊社はグローバルブランドですので、本来であれば海外本部から発信される情報をしっかり受け止めてから体制を整えていきます。しかし今回は待っていられない状況です。自分たちで考え抜いて、目の前のできることから対策を講じていかなければなりません。
はじめ手探りの状態でしたが、2020年2月頃には総支配人の指示のもと従業員全員にマスクの着用を命じました。どのサービス業よりもいち早くマスクでの接客を実行したと思います。
当時は違和感があり戸惑いもありましたが、従業員全員が今できる最大限を考えていたので、正しい判断ができた結果だと感じます。
現場の生の声を反映。他部署や同業他社まで、感染リスクに関してスムーズに情報交換を行った
2月頃にマスクを着用していたのは、さすがの早さですね。手探りの対策構築で心がけていたことは何だったのでしょうか。
藤本様
生の声を聞くことですね。実際に現場で働く従業員に、感染リスクが高い部分はどこだと思うかをヒアリングしていきました。
お客様に安心できるサービスを提供することはもちろん、スタッフも安心して仕事ができる状態を目指したんです。厨房のシェフや清掃員まで、さまざまなポジションの声を反映していきました。
具体的にどんなことを取り入れましたか?
藤本様
たとえば、披露宴場にある大人数用のテーブル。適切な席配置に迷ったので、すぐにブライダル部門のスタッフに相談しました。現場の動きを再現してもらいながら感染リスクを想定し、結果的に通常9名で座るところを6名の席配置にしたんです。
判断に迷う時は、部署間はもちろん、場合によっては他社さんとも協力し合いながら密に情報交換をしていました。
共通マニュアル「ヒルトン・クリーンステイ」で、感染対策を”見える化”
現在は、全世界のヒルトンホテル共通のマニュアルがあるとお聞きしました。施設内には案内板が多く設置されているんですね。
藤本様
はい。ヒルトンは消毒製品メーカーであるRB社と共同で、全世界のホテルのために策定した衛星・消毒基準『ヒルトン・クリーンステイ』を開発しました。それを基に、ヒルトン東京お台場でも運営をしています。
たとえば、会議室では最も頻繁に触れるテーブルや椅子、AV機器など10箇所を中心に清掃手順チェックリストを設け、会議開始30分前に徹底した消毒作業を実行。清掃後、消毒済みの証明として入り口にはヒルトン・クリーンステイシールを貼っています。
右『ヒルトンEventReady 会議室・宴会会場内チェックリスト』
シールですか。消毒された部屋であることが目に見えてわかるので、とても安心できますね。
藤本様
はい。宿泊部屋でも同様に、消毒処理後ドアと壁につながったシールを貼るんです。ドアを開けるとつながっているシールが破れて、人が入室したかどうかが一目でわかります。
このシールにはQRコードが記載されていて、動画付きでヒルトンの感染対策情報が確認できるんです。テレビのリモコンなど多くの方が触れる箇所にはシートを巻いて、消毒済みである証明をしています。こうして安心だと思っていただける要素を1つひとつ増やしていますね。
施設のいたるところにヒルトン・クリーンステイの文字が見受けられるので、お客様も徹底された感染対策が実感できそうです。
藤本様
マニュアルを作成しお客様に文章で開示するだけではなく、こうして形として残していき、実態の部分を正しくお伝えすることが大切だと考えています。
また『感染対策の見える化』に関連して、各部屋バルコニー付きであるのが特徴です。この大きな窓を介して空気をすぐに入れ替えられますよね。これらの目に見える安心感がお客様にお選びいただける理由の1つだと実感しています。
逆境をチャンスに変える。お客様に第一に寄り添って、ヒルトンならではのおもてなしを考え続けたい
実際、GoToトラベルが原因で感染が拡大してしまったという世間の声に関しては、どのようにお考えですか?
藤本様
難しいですね。世間では人それぞれの考えがあります。命ももちろん大事ですが、安全衛生を第一に考えつつ経済を動かしていくことが重要になると思っています。だからこそ、自分たちの課題点を逐一見つけ、工夫をこらす必要があると考えます。
たとえば、お客様のチェックアウトです。待機列が密な状況を生み出してしまっているのではというお声がありました。そのご意見をすぐに反映し、ノンストップチェックアウトというボックスを作りました。
このボックスにルームキーを入れるだけでチェックアウトができるんです。列に並ぶ必要が無くなり、感染リスクを減らせました。こうしてお客様が安心する仕組みをスピード感を持って作っていくことが重要だと思います。
藤本様
利用者の方々に少しでもお喜びいただけるように、ペン型のオリジナルアルコールやマスクも作成しました。今後もこの状況下に悩み続けるのではなく、乗り越える工夫を楽しみながら考えて参ります。
右 『ヒルトン東京お台場オリジナルペン型アルコール』
最後に、みなさまへお伝えしたいことはございますか?
藤本様
まずはこのような状況であっても、お台場に足を運んでくださるお客様に感謝申し上げます。たくさんのご意見を取り入れながらここまで切磋琢磨してきました。
いつまでこの状況が続くかはわかりませんが、我々はお客様の安全と健康を第一に考えて引き続き対策を続けて参ります。日々感じているお客様への感謝をしっかりと還元できるように、万全の体制で皆さまのご利用をお待ちしております。
【設備情報】
名称 | ヒルトン東京お台場 |
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所在地 | 〒135-8625 東京都港区台場1-9-1 [MAP]
TEL: 03-5500-5500 FAX:03-5500-2525 |
施設内容 |
室内有線・無線インターネット利用可能 レストラン/バー フィットネス/スパ/ビジネスセンター 453 客室 会議室 |
チェックイン チェックアウト |
チェックイン:15:00 チェックアウト:12:00 |
駐車場 | 駐車場有り 2,000円より |
ヒルトン東京お台場 ホームページ:https://www.hiltonodaiba.jp/
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