2020/12/07
【比較】オートorプッシュ式アルコールディスペンサーの利点と懸念点
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、街中で見かけるようになったアルコールディスペンサー。お出かけするときにスプレーを使って除菌、お店に入るときも除菌、食事をするときにも除菌……と、触らない日はないほど、広く使用されるようになりました。
少し前までは自分でボタンを押し込んでアルコールを手に取る「プッシュ式」のディスペンサーが多かったものの、感染対策が必要な期間が長引くなかで、最近は手をかざすだけでアルコールが噴出される「非接触式」のディスペンサーも目にするようになりました。
この2種のディスペンサー。一見すると高機能な非接触式のほうが、便利で使い勝手が良いように見えます。しかし、使う人やシチュエーション次第では、プッシュ式のほうが便利で大きなメリットが得られる場合も。
今回はプッシュ式と非接触式、それぞれのアルコールディスペンサーのメリット、デメリットを見ていきます。
目次
手で触れる必要がなく、片手でも使用可能な非接触式ディスペンサー
非接触式ディスペンサーのメリットは、なんといっても「手で触れる必要がない」こと。
コロナウイルスの感染対策で、蛍光灯のスイッチやドアノブなど、不特定多数の人が触れる場所には積極的なアルコール消毒が求められています。アルコールを出すにはボタンに触らなければいけないプッシュ式のディスペンサーに、使用をためらう人も少なくない様子。
そんな人にとって、非接触式ディスペンサーの「ボタンに触らず、手をかざすだけで」アルコールが噴出される仕組みは大きな魅力です。また、「消毒はしたいけど、いちいちボタンを押し込んでアルコールを取るのは面倒」「荷物を持っていて、片手がふさがっている」という人にとっても、非接触式の通りがかったときに手軽に使用できる点は大きなメリットかもしれません。
そして、個々の商品に左右される部分は大きいものの、無機質なデザインがほとんどのプッシュ式のディスペンサーと違い、非接触式ディスペンサーにはデザイン性の高い商品も多く、「置いた空間に馴染む」ことも見落とせないポイントです。
特に安価なプッシュ式のアルコールディスペンサーは、使いやすい形状をしているものの、会社の受付や、内装にもこだわりがある飲食店や小売店に馴染むデザインとは必ずしも言えません。
一方のオート式ディスペンサーは本体が金属のものや白物家電のような見た目のもの、一見するとディスペンサーとわからないようなものまでデザインに一工夫されているものも多く、水周りの製品がないオフィスや店舗の雰囲気 に溶け込みやすいのは大きな特徴と言えるでしょう。
非接触式ディスペンサーでは、アルコールが出すぎてしまう?
そんな楽で機器に触れる必要のない非接触式にも、見落とせない大きなデメリットがあります。それが、「噴出量をコントロールできない」こと。
いち使用者の視点に立つと、左右の手の消毒が十分に行え、かつ手のひらから液が垂れないくらいの「ちょうどいい量」アルコールが噴出されれば十分です。 しかし、手の大きさ次第で必要な量が違うのはもちろん、肌が荒れやすいので少なめに使いたいなど、人やその時々によって「ちょうどいい量」は違うはず。
しかし、オート式の噴出量は常に一定。設置の際に噴出量を設定できるモデルもあるものの、使う側では噴出量を調整できないことがほとんど。使う側は、「噴出されるアルコールをすべて手のひらで受け止める」ことしかできないのです。
そのため、想像以上に噴出量が多かったせいで手がびしょびしょになったり、机にアルコールがこぼれてしまったりすることも……。噴出量が事前に設定できるモデルであれば、設置時にちょうどよい量を見て、細かく調整するようにしましょう。「足りなかったら2回使ってもらう」ことを想定して、1回分の噴出量を少なくしておくのも良いかもしれません。
プッシュ式の強みは「だれもが戸惑わずに使える」こと
そうなるとプッシュ式ディスペンサーは「噴出量を使う人の側で調整できること」が強みの一つであることがわかります。
「帰社後だから、アルコールを多めにとってちゃんと消毒したい」、「手が小さいので、普通の人よりは少なくていい」など、それぞれの必要な量にあわせてプッシュする深さや回数を変え、ちょうどよい量を手に取ることができるのは大きなメリット。しかも過度な噴出によるアルコールの無駄も防げます。
他に見落としがちなのが、「誰がどう見ても、アルコールディスペンサーだとわかる」点。
非接触式をはじめとした高機能なディスペンサーは、デザインが多様化した結果、ひと目見ても「これがディスペンサーだ」とわからなかったり、どこを触ればアルコールが噴出されるのか、操作方法がわからなかったりすることも少なくありません。ボタンの場所と噴出口が丸見えなプッシュ式ディスペンサーであれば、老若男女、誰であっても使い方を間違うことはないでしょう。
もし、デザインや使い方が複雑なディスペンサーを設置する場合は、その横に使い方を説明した紙を貼り付けておくなど、初見の人で迷わず使えるような工夫をしておくのが親切かもしれません。
シンプルが故に「どのように噴出されるか」「液だれはあるか」は気にしたい
シンプルかつ使いやすいプッシュ式ですが、ディスペンサーによって、性能はもちろん、液の噴出の仕方に違いがあるのは覚えておいたほうがいいかもしれません。細かい霧状に噴出するものや、少しだけ「だま」になるディスペンサーなど、その噴出方法は値段やモデルによってさまざまなのです。
モノによってはノズルの部分に残ったアルコールが机にたれてしまったりすることもあります。ディスペンサーの下に給水用のマットを敷いたり、近くに拭き取る用のふきんを常備したり、使用感に応じて対処が必要なことも。
そして、先にお伝えした「プッシュする場所に触らないといけない」のも見落とせないポイントです。「触ったあとの手はすぐにアルコール除菌しているから大丈夫」という見方もありますが、「プッシュ式はできるだけ使いたくない」と思う人も少なくないでしょう。
必要に応じて、「アルコールスプレーを除菌する」といった対応が必要になるかもしれませんので、設置したら気を配ってメンテナンスをするようにしましょう。
プッシュ式と非接触式、場所と場面で使い分けるなら?
では、こういった特徴を踏まえつつ普段のオフィスにディスペンサーを設置するなら、それぞれどういった場面が適しているのでしょうか?
非接触式ディスペンサーが向いているのは、たとえば会社の受付やエントランスといった、不特定多数の人が行き来する場所です。外からウイルスを持ち込まないようにするだけでなく、物理的な接触を避けてアルコール消毒ができるのは大きな強み。
また「荷物で片手がふさがっている状態でも、アルコールを手に取ることができる」というのも嬉しいポイント。荷物をいちいち手放す必要がなく、ストレスがなく使用できることで、消毒の頻度が上がることも期待できるでしょう。荷物の出し入れが多い場所であれば、非接触式ディスペンサーのほうが手間がかからないことは間違いありません。
プッシュ式ディスペンサーを設置するなら、オフィスの執務スペースなど、限られた人が使用する場所に設置するのが良いでしょう。使用する人が限定されることで接触のリスクも抑えられるだけでなく、使用頻度が高い場合では「適量を手に取れる」という特徴もプラスに働きます。
複数箇所にたくさんディスペンサーを設置したい場合も、プッシュ式のほうがコストや手間を抑えて対応できます。各部屋にディスペンサーを設置した上でそれぞれの部署にも配布、トイレや廊下、給湯室に設置して……と、使用する場所と場面がいくつも想定される場合、初期設定や電池も不要なプッシュ式を活用したほうが、運用開始がスムーズです。
もし飲食店や小売店でディスペンサーを設置するのであれば、お店の客層を考慮して選定することが必要になるかもしれません。デザインに特徴のある非接触式ディスペンサーを設置した場合、お客さんによっては使い方がわからなかったり、ディスペンサーをディスペンサーだと気づかなかったりするケースが出てくる可能性も。
「お客さんの来店時に、店員がアルコール消毒を促す」といったオペレーションのやり方によっても適したディスペンサーの方式は変わってきます。店舗で活用する場合は、店頭にいるスタッフの人数や普段のオペレーションの内容に応じて、使用するディスペンサーを検討するのが良いかもしれません。
それぞれの良さを理解して、自社にあわせた使い分けを
コロナの影響を受けてさまざまな商品が販売されているアルコールディスペンサー。一見すると触れる必要がない非接触型ディスペンサーが便利のようですが、プッシュ式にはプッシュ式の良さがあります。
それぞれの特徴を一言で説明するなら、「おしゃれで接触の不安はないものの、アルコールが出すぎる恐れがある非接触式」、「ボタンを押し込む手間はあるものの、使い方に困らず、必要に応じたアルコール量で除菌ができるプッシュ式」といったところでしょうか。
置く場所や使う人の傾向、商品の特性を知った上で、いい感じに使い分けたいですね!
プッシュ式と非接触式、両者のディスペンサーを使ってみてわかったこと
- 非接触式ディスペンサーは使用が楽、消毒の頻度が上がることもある
- 一方で、非接触式は使う人が噴出量を調整できない。液だれや使いすぎに注意
- プッシュ式はボトルに触れないといけないが、噴出量を調整できるのは嬉しい
- プッシュ式は、非接触式と違って「使い方がわからない」心配はない
- 見た目やデザイン性を取るなら、非接触式のほうが内装になじむかも
(文・編集=ノオト)
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