2023.03.28 公開
2022年4月より、後を絶たない飲酒運転による悲惨な交通事故を減らすため、一定台数以上の自動車を保有する事業所では、アルコールチェックが義務化されました。
該当する事業所の中には、アルコール摂取量の数値基準がどのくらいなのか気になる方もいらっしゃるでしょう。本記事では、アルコールチェックにおける酒気帯びの数値基準、アルコールチェッカーの数値の見方と罰則、チェッカー使用上の注意点などを解説します。これから本格的にアルコールチェックを導入する事業者は参考になさってください。
目次
アルコールチェックの基準は、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上で「酒気帯び運転」とみなされ、車の運転を禁じられます。「少しなら大丈夫だろう」と飲んでしまうと、酒類への耐性の強弱に関わらず運転技能が低下することも明言されています。反応の遅れや注意力散漫が事故につながることは容易に想像がつきます。どのくらいの量を飲めば0.15mgの基準を超えるかは、体格にも左右されますが、誰であっても少しでも飲めば簡単に超えてしまう数値であることは覚えておきましょう。
道路交通法では、飲酒運転を大きく分けて「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類に分けて定義しています。
酒気帯び運転とは、酔った状態でなくても、「呼気に含まれるアルコール濃度の数値が呼気中1リットルに対して0.15mg以上の状態」での運転をさします。酒気帯び運転をした場合には、道路交通法により罰せられます。違反点数・罰則は以下の通りです。
アルコール濃度 | 違反点数 | 処分 | 罰則 |
---|---|---|---|
0.15㎎以上0.25㎎未満 | 13点 | 最低90日間の免許停止処分 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
0.25㎎以上 | 25点 | 免許取り消し処分+最低2年間の欠格期間※ | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
酒酔い運転とは、アルコールチェッカーで出たアルコールの濃度数値に関係なく、「正常に運転できない恐れのある状態」での運転をさします。以下のような運転手本人の状態から酒酔い運転かを判断し、その場で検挙されます。
その他にも酒酔い運転をした場合は、道路交通法により罰せられます。違反点数・罰則は以下の通りです。
アルコール濃度 | 違反点数 | 処分 | 罰則 |
---|---|---|---|
– | 35点 | 免許取り消し処分+最低3年間の欠格期間 | 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
運転手にアルコール類を提供・飲酒を勧めたりする行為や、飲酒運転と知りながら車両に同乗することを要求する行為にも刑罰が科せられます。どちらの場合も刑罰の内容は同じで、道路交通法では以下のように規定されます。
飲酒運転の種類 | 刑罰 |
---|---|
運転手が酒気帯び運転をした場合 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
運転手が酒酔い運転をした場合 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
運転手から誘われて同乗した場合には、同乗罪が成立しないケースもありますが、飲酒運転が疑われる運転手の誘いは、しっかりと断るようにしましょう。
従業員が酒気帯び運転をした場合、企業にも罰則が適応されます。アルコールチェックを行わず、従業員が業務中に飲酒運転を行った場合、代表者・運転管理責任者に罰則を科せられる恐れがあります。
その上、違反時に使用された車両は6か月以内の範囲で、使用禁止にされる場合も。また、運転者が酒気帯びの状態であると知っていながら社用車の運転を指示した場合には、使用者・管理者の管理不足となり、刑事責任を問われるケースもあります。
アルコールチェッカーを活用し、正しい酒気帯び確認をするために、アルコールチェッカーを使用する際に気を付けるべき点について解説していきましょう。
アルコールチェッカーは、測定する直前に口にした飲食物や体調不良、薬の服用・喫煙・マウスウォッシュの使用・歯磨き直後などにも反応する場合があります。さらには、ノンアルコール飲料にも微量のアルコールを含むことがあるので注意が必要です。このような誤検知がないように、従業員に対してルールや注意事項をあらかじめ発信しておくことをおすすめします。
▼アルコールチェッカーの誤検知についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
アルコールチェッカーでは違反基準に満たない数値であっても、安全な運転ができる証明にはなりません。数値には表れなくても微量のアルコールが残っていたり、アルコールチェッカーの故障や誤作動のために誤った数値が出る場合もあるので注意してください。
アルコールチェックは対面での確認が原則であり、アルコールチェッカーの数値だけでなく、以下についても確認する必要があります。
アルコールチェックによる測定結果は参考材料のひとつ。以上の項目をしっかりと確認した上で、安全な運転が可能かを総合的に判断するようにしましょう。
「昨晩たくさん飲んだけど、よく寝たから大丈夫」という考え方をもつ従業員がいるかもしれませんが、この考え方は危険です。主としてアルコールの問題に取り組む特定非営利活動法人ASK(アスク)の調べによると、飲酒運転により懲戒処分を受けたケースの約3分の1は、飲酒後に休息・仮眠を取った後や翌朝の運転で検挙されています。一般的にビール1缶分のアルコール分解には4〜5時間かかり、睡眠中は代謝が落ちるため分解はさらに時間がかかります。十分な休息をとったからといって安心するのは禁物なのです。その日アルコールを摂取していない場合にも徹底したアルコールチェックが求められます。
▼飲酒量と体内アルコール濃度等の関係
飲酒 | アルコールの 重さ(g) | アルコールが体内から 消える推奨時間 |
---|---|---|
ビール(5%) :350ml | 14g | 3.5時間 |
ビール(5%) :500ml チューハイ(7%) :350ml 日本酒(15%) :160ml(0.8合) ワイン(12%) :ワイングラス2杯(200ml) ウイスキー(40%):ダブル1杯(60ml) | 20g | 5時間 |
正確な数値結果を得るためには、アルコールチェッカーを正しく使わなくてはなりません。アルコールチェッカーを使用する時には、以下の方法をおすすめします。従業員へ事前周知してみても良いかもしれません。
口内に食べ物や飲み物が残っていると、誤検知する場合があります。たとえば飴やガム、スナック菓子の清涼剤、キシリトールやメントール、プリンやキャラメルの香料など。正しく測定するためには「水」でうがいをしてからアルコールチェックをするのをおすすめします(うがい薬は誤反応を引き起こす可能性があるため水を推奨します)。
ノンアルコールビールやチョコレート、栄養ドリンクなど、一般にアルコール成分を含まないと考えられている食品類にも微量のアルコールが含まれていることがあります。キムチや味噌汁、パンなどの発酵食品もアルコールチェッカーに反応する場合があるので、摂取には注意が必要です。
飲食直後は正確なアルコール値を測定できないケースがあります。アルコールチェックは、飲食後うがいをして20分から30分ほど時間をあけるとよいでしょう。
アルコールチェッカーは、しっかりと息を吹きかけなければ正しい測定ができません。少量の息しか吹きかけないのはNG。安全運転のためにしっかりと口から息を吹きかけるよう従業員に周知しましょう。
他に、喫煙者に反応する場合もあります。
道路交通法で定められているように、誰でもどんな場合でも決して飲酒運転をしてはなりません。「お酒は飲んだけど、数値はクリアしているから大丈夫」といった甘い考えで運転すると、大事故を引き起こしてしまうかもしれないのです。自分や他人の命を守り、人生を狂わせないよう、運転手自身が飲酒運転しないよう厳しく自分を律するのはもちろん、企業側の安全運転管理も非常に重要になってきます。アルコールチェッカーによる測定結果は一判断材料にすぎず、対面で運転者の様子もしっかりと確かめ、運転させても大丈夫か判断するようにしましょう。