タリーズコーヒージャパン株式会社様と初のお取引が実現したのは、2019年。アイテムはタリーズコーヒー様のイメージキャラクターである「ベアフル」をモチーフとした「ベアフル ブランケット」であった。この初回のお取引でアイグッズのものづくりにご満足いただけ、2021年で3年連続のご発注となった。
タリーズコーヒー様のご担当者に、アイグッズの評価できる点や感想などをうかがうと、優れた商品企画力とブラッシュアップ能力、そしてその品質の高さを挙げられた。さらには「単なる発注者とグッズ制作会社という関係ではなく、1つのグッズを世に出していくパートナーのような関係性が創れた」とのお言葉も聞くことができ、グッズメーカーとしてこれ以上ない高い信頼と評価を得たことは、大きな励みとなった。
タリーズコーヒー様にお話をうかがったおよそひと月後には、アイグッズが手がけた「ベアフル ブランケット」が、店頭に飾られ、ショップを訪れるお客様を可愛らしい顔でお出迎えしていた。手にしたお客様の笑顔こそが、タリーズコーヒー様だけでなく、アイグッズの喜びでもあった。
しかし、販売開始からしばらくして、タリーズコーヒー様からアイグッズに1本の電話が入る。それは「ベアフル ブランケット」をご購入されたお客様からクレームが届いたという連絡だった。不良品はただちに良品と交換し、社としても担当者も心から反省しているということだが、品質第一主義を社風に掲げるアイグッズが、なぜ不良品を発生させてしまったのだろうか。
アイグッズの戒めとして成長の糧とするためにも、このトラブルを振り返り、アイグッズの品質管理体制に問題はなかったのかを改めて検証しておこう。
アイグッズの品質管理体制とは
今回のクレーム発生の要因となった不良が、どのような状況で生じたのかを確認することも大切だが、その前に、アイグッズがどのような品質管理体制を敷いているのかを確認しておきたい。
そこで、「ベアフル ブランケット」のグッズディレクターから、その両者について話を聞いてみることにした。
事前対策でリスクを可視化する
「アイグッズの品質管理は大きく『生産開始前の事前対策』『生産段階』『生産後の検査』に分かれています。その中でも最も特長的なのが、生産を開始する前にアイテムの仕様を精査して、事故が起きる可能性があるポイントを洗い出すことです」
アイグッズが手掛けるアイテムは、バック、ポーチ、傘、鏡、財布、ぬいぐるみなど実に多岐にわたる。そしてアイテムごとにトラブルが発生しやすいポイントも異なるのだという。
「今回の『ベアフル ブランケット』の場合は、ブランケットを収納した後に閉じるファスナーなど、誰もがリスクポイントと分かるところだけではなく、ベアフルの表情の違いがお客様に与える印象を左右するので、顔周りの見え方もリスクポイントとして挙げて、タリーズコーヒー様にもご確認いただきました」
リスクポイントの洗い出しは、仕様が確定次第、グッズディレクター、デザイナー、チーフ (グッズディレクターの上司)の3人で行われる。そして品質トラブルに結びつく可能性があるところを可視化して顧客と共有した結果を「仕様書」として確定しているそうだ。
全てを機械生産するものづくりと異なり、手作業で生み出されるものに不良品ゼロを求めるのは不可能に近い。しかし、それを限りなくゼロにするための第一歩が、生産開始前の事前対策 (アイグッズでは「予防治療」と呼ぶ)だとアイグッズは考えている。
「リスクを事前に把握できているか、いないかで、品質に大きな差が生まれると思っています。このリスクが可視化された『仕様書』に基づいて工場では生産が行われ、検査の際の『検品基準書』も作成されます」
アイグッズにはアイテム種類ごとのリスクポイントが蓄積されているという。これはグッズメーカーとして、大きな財産の1つに違いない。
提携するのは信頼のおける工場だけ
生産段階での品質管理体制としては、品質重視の工場のみと提携していることが挙げられる。中国の協力会社は、アイグッズの監査基準を満たしているところだけを選定し、安易に提携先を増やさないというポリシーを貫いている。そして、それらの信頼できる工場において、リスクが洗い出され可視化されている『仕様書』を基に生産を行っている。
「生産現場でも、リスクポイントは特に留意すべき加工箇所として制作スタッフの間で共有されています。単にスペックだけが指示されている仕様書とは異なり、気をつけるポイントが明確にされていることは、つくり手にとっても安心して仕事ができる環境が整っていると言えると思います」
中国と日本で全数検査
そして品質管理において最も重要なカギとなるのが、生産後の検査体制だ。
「中国では、第三者の検品専門工場において、洗い出した生産リスクに基づく『検品基準書』によって全数検査を実施しています。とくに縫製品に関しては異物混入検査(検針・X 線検査) を義務付けています。さらに日本国内に輸入した後は、アイグッズの検品センターで全数検査を実施しています」
オリジナルグッズ生産において、ここまで徹底した検査体制を確保している企業は多くはない。しかもこの検査体制は、原則として制作コストの単価が数百円のものであっても共通しているというから驚きだ。
「お客様に対しては、アイグッズの品質管理体制をご説明し、納得していただいた上でお取引を始めていただいています。タリーズコーヒー様のように検品の立ち会いに来ていただくこともありますし、日本の検品センターも視察していただいて、実態をご確認いただいています。高品質を実現するため、アイグッズはここまでやっているのだ、ということをご理解いただけるように努めています」
トラブルヒストリーを財産に、さらなる品質向上を目指す
これだけの品質管理体制を整えながら、残念ながら事故は発生してしまった。それほど、ものづくりは難しいということかもしれない。
「ここまで品質管理を徹底しているにも関わらず、今回の『ベアフル ブランケット』でクレームを防ぐことができなかったことは、慚愧に堪えません。タリーズコーヒー様にも、ご購入されたお客様にも、誠に申し訳なかったと思っています」
今回のトラブルの原因は、盲点を突いていた。検査をした台の色が「ベアフル ブランケット」と近似色だったために、保護色のような働きをしてしまい、不良カ所を見落としてしまったのだ。
「これまで、アイテムそのものにだけ目がいっていましたが、検査をする環境も大変重要で あることに気付くことができました。今回のトラブルを血肉として、二度と同様の事故を起こさないように精進していきます」
アイグッズの全社員に配布される「品質管理ポリシー」という冊子がある。今回グッズディレクターから聞いた品質管理体制や、品質に対する理念、行動指針などが記されたアイグッズパーソンのバイブルともいえる冊子だが、その最後の見開きには「私の品質管理ポリ シー」と「私のトラブルヒストリー」を自ら記すページとなっている。
トラブルはないにこしたことはないが、完全にゼロにすることは難しい。しかし、同じトラブルは二度と起こさない。そのために、自らが経験したトラブルを記録し、さらに全社で共有することで限りなくゼロを目指していくというアイグッズの信念が、ここに現れている。
「ベアフル ブランケット」を担当したグッズディレクターは、次の一言で結んだ。
「わたしは、タリーズコーヒー様に対して、今回ご迷惑をおかけした分を取り返すだけの貢献を続けていきたい、そう決意しています」
顧客ともリスクポイントを共有する意味
洗い出したリスクポイントは「アイグッズが顧客の仕様どおりにものづくりをするために、アイグッズが認識していれば良く、顧客と共有する必要はないのでは」と考える向きもあるかもしれない。しかし、実はこれこそが重要なプロセスなのである。
アイグッズに発注する顧客の多くは、生産するアイテムを本業で取り扱っていない。つまり仕様を決定することはできても、そのアイテムをつくる上でどのような不具合が発生しうるかに関しては、理解が及んでいないことがある。
このリスクを可視化して顧客の理解と合意を得るというプロセスを経ることで、顧客自身に生産に存在するリスクを認識してもらうとともに、アイグッズがリスクを防ぐために生産と検査の現場でどのような対応をしているのかを理解してもらうことができる。これは顧客に大きな安心感を与えることになり、アイグッズに対する信頼感を醸成することにもつながっている。
※タリーズコーヒー様のイメージキャラクターである「ベアフル」をモチーフとした「ベアフル ブランケット」の写真。
こちらの写真は、お客様に許可をいただいた上で特別に撮影しております。
※ 内容、社名等はお話を伺った2020年当時のものです。
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